試行錯誤とは、いろいろ試してその結果を見ながら適切なやり方を手探りでさがす方法のことで、ものごとが思うようにいかないときに採用されることが多いのですが、テニスでこの状態になるとドツボにはまります。

この状態に陥っているプレイヤーは、アウトの次にネット、ネットの次にアウトというように、行ったり来たりを繰り返すことが多いので、ラケットドックのようにプレーを横から見ている場合は一目瞭然でわかります。

人は誰でも、失敗したら同じ失敗を繰り返さないようにするのが普通なので、アウトした後はアウトしないように打とうとします。

◆人として当然のことをやってはいけない!?
この、人として当然のことが、テニスでは最もやってはいけないことなのです。
なぜなら、前回失敗したときと同じ状態のボールは二度と飛んで来ないからです。

テニスは基本的に相手が打ったボールを打ち返すスポーツなので、飛んで来るボールの状態は毎回異なるため、それに合わせて毎回適切にスイングを変えなければならないのですが、アウトしないように打とうとしていると、どんなボールが飛んで来てもアウトしないように球筋を押さえ込もうとするためネットしやすくなるわけです。

ネットした後も同様で、前回よりもっと球筋を持ち上げようとするのでアウトしやすくなります。

ですから、失敗を反省すると、飛んで来るボールの状態に合わせて毎回スイングを柔軟に変えるという、テニスで最も大事なことができなくなってしまうのです。

◆試合で陥りやすい
この状態は、何とかしようとする努力が次のミスの原因になるという仕組みなので、一生懸命やっても事態は一向に改善せず、かえって悪化するという悲劇的な状況に陥ります。

そして、こうした状況は、真剣にプレーしている大事な試合などで発生することが多いのです。

特に、性格的に真面目な方ほど自分の犯したミスにきちんと対応しようとするので、試行錯誤のドツボにはまりやすいといえます。

試合に出るのはキライという方も少なくないようですが、その原因の一部には、負け方が良くないということがあるのかもしれません。

やれることは全てやり尽くして負けたというのであれば、負けてもイヤな気持ちになることはないでしょうが、試行錯誤の繰返しで負けるとイライラが残ります。

努力しているのにうまくいかないとイライラする上に、一番の問題は、失敗を反省しながらプレーしているとちっとも楽しくありません。

◆キッカケはラケット
飛びの足りないラケットを使っていると、ボールを飛ばすために力を入れて押すような動きになりやすいのですが、そうすると、プッシュアウト気味の棒球が出やすくなります。

逆に、飛びの良すぎるラケットを使っているプレイヤーは、飛びすぎるのを防ごうとして力を抜いたり、回転量を増やしたりするケースが多いのですが、そうすると、やり過ぎてネットしたり、短くなったりすることがあります。

どちらのケースも最初は、使っているラケットの特性の影響でアウトやネットが出やすくなるのですが、プレイヤーがマジメな場合はそこから試行錯誤がスタートして、アウトとネットが交互に発生するという、表面上は全く同じ症状に陥るわけです。

打つときに一生懸命努力しているという自覚の有る方は、この「試行錯誤状態」を疑ってみても良いでしょう。

そこからの抜け出し方については、次回解説させていただきます。